金沢21世紀美術館 館長 島 敦彦

アートを通じて、人が集まる拠点づくりを


島 敦彦(Shima Atsuhiko)
1956年富山県生まれ。1980年早稲田大学理工学部金属工学科卒業。
1980年4月より建設準備室を経て富山県立近代美術館に勤務した後、
1992年より国立国際美術館(大阪)に移り、主任研究員、学芸課長を経て、
2013年より同館副館長兼学芸課長となる。
2015年より愛知県美術館館長を務めた後、2017年4月より現職。

--2017年4月に金沢21世紀美術館の新館長に就任されました。金沢における金沢21世紀美術館の役割をどのように考えていらっしゃいますか。

Shima
-何より立地がいいです。兼六園や金沢城公園、長町武家屋敷など主な観光地が徒歩圏内にあります。その中にあって、金沢21世紀美術館は、ユニークな建築によって観光客を引き寄せる装置の一つとして機能しています。

現代美術を扱いながら、これだけ集客力のある美術館は珍しいです。公園のようにふらりと立ち寄れる場所というコンセプトが成功しているのもありますし、いつでも無料で鑑賞できる作品があるのもポイントです。

作品名を知らなくても、「スイミング・プール」や「雲を測る男」などを見ると記憶に残ります。それが大事なんです。

金沢21世紀美術館が人気となれば、周辺の商店街や広坂などにも人が集まり流れができてきます。そういった街なかへの集客面での効果は生まれているように感じます。

--金沢には海外の方も多数訪れています。そういったことも展示では意識されていますか。

Shima
-国際的にも国内的にも注目される作家たちの展覧会を行なっています。コレクションは新たな文化的価値を創出するものを積極的に収集しています。

特に来年は金沢21世紀美術館が誕生して15周年を迎えます。収蔵しているコレクションを見直し、充実したコレクション展も開催していく予定です。

美術館自体はそれほど大きいわけではないので、恒常的に見せられるスペースが少ないんです。15周年をいい機会ととらえ様々なことを発信できたらいいと考えています。

--金沢21世紀美術館から竪町商店街は歩いて5分ほどと近い距離にあります。竪町の印象はどのようなものですか。

Shima
-私は富山出身で、元々金沢には馴染みがありました。金沢は雨が多いし雪も降ります。なのにアーケードのない開放的な商店街というのが特徴的だなと思いました。

メイン通りから一本中へ入ると、毛細血管のように脇道が何本もありレストランやバーなどお店が立ち並んでいます。それらが商店街の魅力をさらに増幅させています。

--金沢21世紀美術館に来た人が竪町商店街まで来てくれるといいのですが。

Shima
-観光客にとって「行ってみたい」と思う場所があると、流れはできてくるでしょうね。食べ物屋さんがもうちょっと増えるといいかもしれません。

例えば美味しいパン屋さんがあれば、そこ目当てに足を運んでくれるお客さんが出てきます。若い人が集まるオープンカフェなどもいいですね。そういった場所が点在していると、人の流れができてきます。

あと、竪町商店街って細長いですよね。その距離感を利用してものすごく長い綱引き大会をしてみるのはどうですか。年2回くらい開催して、その日は屋台なども並べ1日楽しめるようにする。

縄を商店街のどこかに飾り、常時展示しておくとか。最初の縄づくりからプロジェクトにして、多くの人を巻き込んでいくなどしても面白いかもしれない。

--確かに、盛り上げるアイデアは色々ありますね。もし金沢21世紀美術館と竪町商店街がコラボするとしたら、どういったことが考えられるでしょうか。

Shima
-2018年は東アジア文化都市の一つとして金沢市が選定されています。中国はハルビン市で、韓国は釜山広域市です。今年はそれにちなんだ展覧会を開催していきます。

竪町商店街はファッションのお店がたくさんありますから、アジアの商品を展開したりファッションショーを行なったりなど関連付けたアピールは可能かなと思います。

当館の学芸員が発案した「変容する家」という展覧会では、金沢の街なかにある空き家を利用して、日本・中国・韓国の現代美術作家たちが作品を発表します。竪町はお店が中心なので空き家はないかもしれませんが…。

--街なかを利用して展示するというのは面白いですね。そう言えば、約10年前にも「金沢アートプラットフォーム」という展覧会が行われ、竪町商店街にもレジ袋を使った花束の作品が展示されました。

Shima
-街なかでの展示を竪町で行なうとしたら、商店街の入口と出口、そして真ん中の3箇所に拠点を作ると面白いかもしれない。空き店舗を利用して、マップを見ながらアート作品を探すんです。発掘する要素があると興味を持ってもらえそうですね。

2017年の秋口に開催された奥能登国際芸術祭では、廃業になった映画館を使って作品の展示を行っています。近所の方も協力的で、高齢の方が映画館が営業されていた頃の昔話を話してくれたそうです。

竪町もアートを展示するとしたら、街の人がそれを誇りに感じ、訪れる人とコミュニケーションが生まれるといいですね。「いいものだから展示します」というやり方だと、親近感を持ってもらえず面倒に思われがちです。

アートを通じて会話が生まれたり、人が集まるような場作りができたりすると拠点として興味を持ってもらえると思います。

--色々と企画を立てて動いてみたいですね。今日はありがとうございました。